風観測システムはどのような用途で使用されているの?
風向や風速に関して計測する風観測システムは、日本では1976年頃から気象庁のアメダスを使った地上気象観測の一環として運用されてきました。この風観測システムは、様々な場面で利用されています。例えば消防署でも風観測システムを導入しています。日本は台風など自然災害の被害を受けることが多くなってきています。自然災害の結果、多数の犠牲を出したことは過去に何度もありますが、未然に予防したり、被害を最小限に食い止めたりするために様々なシステムを駆使しています。気象観測装置を設置することは、今後どのような災害発生が今後予想できるか、どの地域が危険で避難誘導をすればいいのかなどの判断決定をするために必要です。
一昔前までは、ハンディタイプの風向風速計を消防署の人が読んで記録する手動観測が主体でした。しかし今では自動化されていて、リアルタイムでWeb上でチェックできるようになっています。手持ちのパソコンや携帯電話、スマホなどを使ってリアルタイムで気象情報を確認する人も多くなってきています。
強風が吹くことによって、屋根や看板などが飛ばされ、それが歩行者にぶつかって大けがになるなどの事故が発生することもしばしばあります。このような被害が発生しないためにも、システムを有効に機能させ危険が発生しないかを監視する必要があります。特に最近では、ごく狭い地域で竜巻などの突風の起きることもあり、ピンポイントで密な観測をする必要性も高まりつつあります。
大気環境機関で風観測システムを導入するケースも見られます。窒素酸化物や硫黄酸化物などの大気汚染物質の濃度の変化をモニタリングすることが目的です。大気汚染物質は決して一つのところにとどまっているわけではありません。風が発生すれば、それに乗って拡散される可能性もあります。特に最近では中国の環境問題が深刻になりつつあります。PM2.5などは中国の都市部でひどくなるともやがかかっているような感じになるほどです。また中国の砂漠の砂である黄砂の問題もあります。PM2.5も黄砂も風に乗って日本にやってくることがあります。そうなった場合、日本の大気汚染による被害にも留意しなければなりません。そこで大気環境機関でこのような汚染物質がどの辺に飛んでくるのか、風観測システムを使って予測しています。また風に乗って日本に来たところで雨が降った場合、一気に大気汚染物質が地上に降りてくることも考えられます。このような予測を行うにあたって、風観測システムを駆使してどうなるかの予想をし、必要に応じて地方自治体などに情報提供を行っているわけです。もし大気汚染物質の濃度が高くなりそうであれば、周知徹底して不必要な外出を極力控えるようにするとか、窓を開けないようにするなどの注意喚起を行うことも可能です。環境省などでは、日本全国の大気汚染状況を24時間モニタリングしています。そしてリアルタイムで情報提供を行っているので、大気汚染などが気になるのであれば、環境省のホームページなどをチェックしてみるといいでしょう。
防衛省でも風観測システムを導入しています。航空自衛隊や海上自衛隊では航空機を保有していて、必要に応じて出動や訓練を実施しています。航空機が安全に飛行するためには、気象状況がどうか、風の状況はどうかをチェックすることが大事です。また陸上自衛隊でも、主要な駐屯地では風観測をはじめとして様々な気象観測を行っています。台風などが駐屯地を通過した場合、いつどの程度の風速に達したかというデータがきちんと記録されています。ちょうど駐屯地の部分を台風が通過すると、暴風域がかかってくるにしたがって風速が強くなっていき、いったん風速が低下します。これは台風の目に入ったことを意味しています。そしてさらにしばらくすると、今度は吹き返しの強風が記録されることもあるでしょう。自衛隊は冒頭に紹介した自然災害の際に規模によっては、出動を求められることもあります。出動の可能性を探るためにも、このような気象観測システムの情報が必要になります。
このように風観測システムは、様々な分野で取り入れられています。このほかにも一般企業で導入を進めているところも見られます。これからの時代、エネルギー改革が進められるのではないかと言われています。日本は化石燃料のほとんどとれないことは広く知られており、燃料エネルギーについては、海外にかなり依存しています。ただし化石燃料も無限に供給されるわけではありません。そこで自然エネルギーに転換しようという動きを見せている一般企業も見られます。太陽光発電や地熱発電などいろいろな自然エネルギーの活用方法がありますが、風力発電も注目されています。風車を回すことでエネルギーを作り出す方法ですが、そのためにもどこに発電所を設置すれば効率的にエネルギー産生できるか、風観測システムで風向風速をチェックする必要があります。