内陸地域で温度の記録が特に高くなる理由
温度の最高記録が内陸の都市で生まれることが多いのは、海から遠く離れているためです。海の風は比較的冷たいという特徴があり、稲の生育を阻害することもあります。東京都内で考えれば、東京湾に面する品川区や大田区では40度近くまで高温になることは稀です。
ところが、内陸の練馬区や多摩地域では夏の暑さは相当に厳しくなります。海沿いの都市の夏が涼しいことは、千葉県の銚子市や勝浦市の記録を見れば分かります。この地域では深くて冷たい海水面に近いですから、海風が常に冷たくなる性質があります。南関東にありながらも、最高気温が30度を超えることが少なくなっているため、隠れた避暑地となっています。東京も海沿いですから、本来は海風で暑さがもっと軽減されてよいはずです。しかしながら、極端な都市化の影響によって、海風を阻害する都市環境になってしまいました。内陸よりは最高の温度が低くても、最低気温は東京都心部のほうが高いことが多くなりました。江戸時代の江戸の町の暑さも厳しかったはずですが、今のように最低気温が30度を上回ることはなかったと考えられます。夕方には打ち水をして涼を取る習慣があるように、夜には過ごしやすくなるものでした。現代の大都会では熱帯夜に悩まされるようになり、クーラーがなければ安眠することが困難となりました。内陸の最高気温の記録は、関東であれば館林市と熊谷市が高いことで有名です。中京地域では岐阜県の多治見市が高く、盆地に位置する京都市も暑いことで有名です。関東平野の中心部にあるのが熊谷と館林の街ですが、東京からの熱風の影響を受けやすくなっています。さらに、山越えのフェーン現象も重なると高温はさらに顕著となります。内陸の温度上昇は、農業にも悪影響を与えています。冷涼な環境を好む作物が育ちにくくなり、逆に熱帯の植物が栽培しやすい環境にもなりつつあります。温暖化の影響が米の名産地にも影響して、極寒地の北海道が米所として人気を集める時代になりました。従来の米所では、暑さに強い品種を開発する努力を行って対処しています。温暖化の時代に最低気温の記録が破られる可能性は低くなっていますが、温度に関してはまだまだ上昇する可能性があります。これからは40度を超える日が普通になれば、今までの生活様式では暮らしが快適ではなくなります。後世の人たちのためにも、温暖化対策が急務となっています。今後はエネルギーの省資源化を実現し、都市の温度を下げる努力が欠かせなくなります。