気圧計で使われる単位
気圧計は17世紀に発明されたと言われています。密閉した管に液体を満たして水槽に直立させ、上部に真空が生じるまでの液体の高さから気圧を計測する仕組みです。管に入れるのは普通の水でも構いませんが、液体が軽いと計測するのに非常に長い管が必要になるため、水銀のように比重の高い液体が便利です。そのため気圧計の単位としては、水銀柱の高さを意味するmmHgが使われるようになりました。今でもmmHgは血圧計などに使われています。気圧に使うことも可能ですが、あまり一般的ではありません。
日本では現在、ヘクトパスカルが気圧計の単位として用いられています。ヘクトは100を示し、ヘクトパスカルは100パスカルの意味です。パスカルは17世紀フランスの哲学者で、流体の圧力に関するパスカルの原理で知られています。この原理が気圧計の発明に繋がりました。単位としてのパスカルは、1N/m2で定義されます。すなわち1平方メートルに1ニュートンの力がかかっているとき、1パスカルとされています。地表の標準的な大気圧を1気圧と言いますが、1気圧は1013.25ヘクトパスカルと定められています。
従来はヘクトパスカルではなく、ミリバールという単位が用いられていました。ミリバールは1000分の1バールの意味で、1バールは1.01325気圧です。すなわちヘクトパスカルとミリバールは、まったく同じ数字になります。ミリバールは気象通報の用語として、1914年から使用されていましたが、1992年12月からはヘクトパスカルに置き換えられるようになりました。これは国際標準に合わせるため、国際単位系(SI)であるヘクトパスカルに統一するという目的がありました。同じ数字で名前が変わっただけなので、特に混乱はありませんでした。
一般的に気圧が下がれば天気が悪くなることが知られています。現在ではスマートフォンに内蔵された気圧センサーなどもあって、簡易的に天候の変化を予測することができます。台風の予報の際には、ヘクトパスカルの数字が気になることも多いでしょう。史上最低気圧とされるのは1979年の台風20号で、中心気圧が870ヘクトパスカルを記録しています。台風の勢力は気圧が低いほど強くなります。ただし風の強さは周辺との気圧差によって決まるため、勢力が弱いからといって被害が少ないとは限りません。気圧計の数字は数字として、避難情報などにも十分に気を配る必要があります。