雨量計の仕組み
雨量を測定することは、防災の観点から非常に重要なものです。河川の氾濫や土砂災害は日本各地で毎年のように発生し、大きな被害を与えています。これらの災害はいずれも、その上流部にある山岳部に多量の雨が降ったことにより引き起こされる災害であり、上流部における雨量を正確に測定することで、その発生の危険をある程度予測することができるからです。また、都市部においても、近年増えてきたゲリラ豪雨による被害に対する備えとして、雨量を測定することは重要な対策となっています。
雨量とは、単位時間にどれくらいの量の水が、大気中から地表に落ちてきたかを表す量で、降った水の体積を単位面積で割って mmで表します。雨量1 mmとは1平方メートルの面積に降った雨をためたとして、 1mmの高さになる水の量で、ちょうど1リットルです。1時間で1mmの雨量だと小雨程度といっていいでしょう。20mmを超えると地域による差はありますが、大雨注意報がでる目安と言われています。
雨量計とは降った雨の量を計測するための装置です。仕組みとしては、漏斗状の入水器によって機器の内部に雨水が流れ落ち、その量を計測します。寒冷地では雪や内部が凍って雨量が観測できないことがあるため、ヒーターが内蔵されたものが使用されています。雨量計には仕組みの違いにより2種類があります。貯水型雨量計は降水を雨量ますに集めてその量から降水量を計測します。仕組みが簡単で安価に構築できる反面、自動排水機能などを備えていないために有人観測が前提となります。一方、転倒ます型雨量計は、機器の内部に転倒ますと呼ばれるますがあり、このますで雨水を受けます。転倒ますは2つのますがシーソーのような形になっており、一定量の雨水がますに貯まるとシーソーが転倒して水を排出します。するともう片方のますが跳ね上がって今度はこちら側のますで雨水を受けます。この左右交互に転倒する回数を数えることにより雨量を観測することができます。自記電接計数器やデータロガーなどをつければ長期間の稼働による自動連続観測が可能となるほか、遠隔地の無人モニタリングなども可能となります。そのため日本国内の観測システムには、気象庁をはじめ転倒ます型が中心となって導入されています。また、気象業務法により公的な気象観測に使用されるものは、気象庁検定に合格した転倒ます型雨量計を用いることが定められています。
これらとは別にレーダーによる雨量の観測も行われています。レーダーによって雨水の粒子から電波の反射を観測することにより降水の分布と雨量を求めることができます。広範囲にわたる降水量を知ることができる反面、レーダー観測だけでは反射強度にむらができるほか、風による雨域の移動など誤差が大きくなってしまうために、アメダスの観測結果を使用して補正を行った解析雨量が用いられます。
機器の設置場所としては、建物や樹木からできるだけ離れた場所を選びます。これは風に乱れが生じて雨の降り方が均一ではなくなり、測定結果に影響してしまうためです。また雨水が地面から跳ね返って受水口に入ってしまうことがあるため、雨量計の下は芝生や人工芝、砂利などを敷いて跳ね返りを極力小さくします。寒冷地ではますや排水口が凍ることを防ぐ対策が必要ですし、積雪を考慮して機器全体をかさ上げすることも必要です。