太陽光発電は「暑すぎると損をする」?
温度と発電効率の意外な関係
目次
- 1. はじめに:晴れていても発電量が伸びない理由
- 2. 太陽電池と温度の関係
- 3. 温度が上がると、太陽光パネルの効率はどれほど低下する?
- 4. 気温が高い季節より、むしろ「初夏」のほうが発電に有利?
- 5. 効率低下を防ぐための対策とは?
- 6. 今後の展望と注意点
- 7. まとめ:日射量だけでなく「温度」も見える化を
- 8. 太陽光発電監視システムにおすすめの製品
1. はじめに:増加する水害と、防災の主役となるデータの力
日差しがまぶしい夏の晴天の日。日差しが強ければ、太陽光パネルはフル稼働しているはず……そう考えるのが自然です。しかし実際には、真夏日や猛暑日の発電量が、春や初夏と比べて意外に伸びないことがあります。これは、気温の高さ、そしてパネルの温度上昇が発電効率に悪影響を及ぼしているためです。日照時間が長い夏は発電に有利と思われがちですが、実際には高温による効率低下が発生するため、最も安定して発電できる季節は春頃とされています。
太陽光発電において、日射量と並んで非常に重要な要素が「パネルの温度」です。暑ければ暑いほどいいというわけではなく、むしろ高温は発電効率を下げてしまう要因となるのです。
2. 太陽電池と温度の関係
太陽光パネルに使用されるシリコン系の太陽電池は、半導体の一種です。この半導体は熱に弱く、温度が上がると出力電圧が下がってしまうという特性があります。つまり、パネルが高温になると、発電できる電力が目に見えて減ってしまうのです。
たとえば、太陽光パネルの表面温度が25℃から65℃に上がると、最大で15〜20%も発電効率が落ちることがあります。これは気温が30℃を超える真夏の屋根上では、珍しくない温度上昇です。
3. 温度が上がると、太陽光パネルの効率はどれほど低下する?
一般的な太陽光パネルには、「温度係数」という指標があります。これは、パネルの温度が1℃上昇するごとに、発電量がどれくらい低下するかを示すものです。この数値が小さいほど、温度上昇による影響を受けにくくなります。近年では温度特性が改善された製品も増えており、1℃の温度上昇あたり約0.4%程度の出力低下に抑えられるものが主流です。
たとえば、パネル表面の温度が25℃から60℃まで上昇した場合、温度差は35℃となります。この場合、温度係数0.4%を乗じると、最大で約14%の出力ロスが生じる可能性があります。これが、猛暑日に実際の発電量が大きく下がる主な理由のひとつです。
4. 気温が高い季節より、むしろ「初夏」のほうが発電に有利?
このような理由から、年間で最も発電効率が高くなるのは、春頃だといわれています。日射量が安定して多く、気温もまだ高すぎないため、パネルが理想的な温度範囲内で稼働しやすくなるのです。
一方、真夏の8月などは日射量や日照時間こそ多いものの、パネルの表面温度が急上昇し、冷却が追いつかなくなります。その結果、期待するほど発電量が伸びないという現象が現場ではよく報告されています。
5. 効率低下を防ぐための対策とは?
温度による太陽光パネルの出力ロスを抑えるには、いくつかの対策が考えられます。
まずは、設置方法の工夫です。たとえば、太陽光パネルを屋根に密着させず、パネルの裏側に風が通るような構造にすることで、自然冷却が促され、温度上昇を抑えることができます。また、屋根の素材や色を白系にしたり、断熱塗料を塗布したりすることで、間接的な冷却効果を高めることもできます。
次に、製品選定時に「温度係数の小さい」パネルを選ぶことも有効です。最近では温度耐性に優れた新型パネルも登場しており、猛暑地域や南向き斜面での設置に特に適しています。
さらに、発電モニタリングの導入も重要です。日射量や気温、各太陽光パネルの温度や出力をリアルタイムで監視できるシステムを導入することで、異常加熱を早期に検知し、必要に応じて洗浄・冷却・角度調整といった対応をとることができます。
6. 今後の展望と注意点
気候変動の影響で、今後さらに気温の上昇が予測される中、太陽光発電設備における「温度モニタリング」の重要性はますます高まっていくと考えられます。
今後は、高温下でも出力が落ちにくい新素材の開発や、最適な運転制御技術の普及が期待され、より安定した発電が可能になるでしょう。
現時点においても、温度の測定を含む発電監視システムの併用は、費用対効果の面でも非常に合理的な選択肢といえます。発電の安定性を高めるとともに、設備の長寿命化にも寄与するとされています。
7. まとめ:日射量だけでなく「温度」も見える化を
太陽光発電の最大化には、単に“晴れているかどうか”を見るだけでは不十分です。気温が高すぎると、むしろ発電効率を下げてしまう要因になることを理解し、設計・機器選定・運用の各段階において「温度モニタリング」の視点を取り入れる必要があります。
温度と発電量の関係を“見える化”することで、発電所や自家消費型設備の稼働率を高め、投資対効果を最大限に引き出すことが可能になります。安定した発電を目指すうえで、「温度」という視点は、これからますます欠かせない要素となっていくでしょう。
8. 太陽光発電監視システムにおすすめの製品
気温計(自然通風シェルター付) TPT100ST
- クラスAのPt100白金測温抵抗体を内蔵し、高精度な温度計測を実現
- 熱干渉を最小限に抑える自然通風シェルターで外気温を忠実に反映
- 気象庁検定取得対応モデル
日射計 FMP1
- 精度・感度・信頼性に優れた日射計
- 小型・軽量で設置もスムーズ
- 気象庁検定取得対応モデル
- 電流出力タイプもラインアップ(FMP1A)
Pt100表面温度センサー TPT100F
- 太陽光パネルのような平面への貼り付けに適した感部構造
- クラスAのPt100白金測温抵抗体のため、高精度な表面温度計測を実現
気象信号変換器箱(気象庁TDボックス) TD29WM
- 日射計・気温計の出力信号を計装信号(DC4~20mA)に変換
- 保安機器を内蔵しており、AC電源の接続のみで簡単に設置・運用可能