気圧計の原理と腕時計への応用

2020-02-07

 教科書などでも見かける水銀式の気圧計は、水銀を満たしたガラス管を水銀槽に立てて、真空部分の長さから測定する仕組みです。760mmHg(水銀柱の高さ)が1気圧とされ、1013ヘクトパスカル(hPa)に相当します。このタイプは現在でも気象観測に使われることもあるほど、精度の高いことが特徴です。しかし大きくて持ち運びができないことや、自動的に観測するシステムには向かないことなどから、用いられる機会は次第に少なくなっています。
 水銀を使わない気圧計にはアネロイド型、ブルドン管式、電気式などがあります。アネロイド型は金属製の容器を真空にして、気圧で膨張したり収縮したりする微妙な変化を読み取る仕組みです。持ち運びが簡単で自動的に記録できるため、現在でも広く用いられています。ブルドン管は容器を長い管の形にして、変化量を大きくできるよう工夫されたものです。最近急速に普及しているのが電気式で、シリコン静電容量式やピエゾ式などのタイプがあります。いずれも高精度で安定した観測が可能です。
 天気が晴れると気圧は高くなり、雨が降ると低くなることは、17世紀頃には知られていました。これを利用して初めて科学的な天気予報ができるようになり、船乗りなどにも重宝されました。現在では本格的な気象観測にはもちろん、家庭用の晴雨計やアウトドア用の腕時計など、広い範囲に応用されています。ハイキングやサイクリング、毎日のジョギングやウォーキングにも、手軽に天気を予測できる気圧計が役立ちます。
 気圧計を内蔵した腕時計はとりわけ登山のときに活躍します。気圧は天候の急変を察知し、危険を回避するための重要なサインになります。また高いところほど気圧が低くなることを利用して、山を登るスピードを計測することもできます。これは安全なペース配分を守るとともに、目標地点へ予定どおりに到着できるかを計算するにも役立ちます。ただし腕時計に内蔵された気圧計は、あくまで相対高度を計るものである点に注意が必要です。高度がはっきりと分かっている三角点や山小屋などで、こまめに補正を行なわないと、正確な数字は出せません。逆に天候の変化は、高度が同じ場所にいなければ予測できません。天候も高度も激しく変化しているときには、どちらも不正確になる可能性があります。登山の際に基本となるのは、地図や天気予報の情報であることを忘れないようにしてください。

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