WBGTとは?暑さ指数の正しい理解と活用方法
目次
- 1. はじめに:猛暑時代に求められる「暑さ対策」の科学的アプローチ
- 2. WBGT(暑さ指数)とは何か?
- 3. WBGT値と気温の違いと重要性
- 4. WBGTの活用場面
- 5. 法制度とガイドライン
- 6. WBGT計測システムの活用とその効果
- 7. まとめ:WBGTの“見える化”が命を守る
- 8. 暑さ指数(WBGT)計測におすすめの製品
1. はじめに:猛暑時代に求められる「暑さ対策」の科学的アプローチ
日本の夏は、年々その厳しさを増しています。特に2020年以降、気候変動による気温上昇は顕著で、2023年の夏には、全国の多くの地域で35℃を超える「猛暑日」が連日観測されました。 このような環境下で、工場、建設現場、学校、スポーツ施設など、あらゆる場所での「熱中症リスク管理」が社会的課題となっています。そしてその対策の中心に位置するのが「WBGT(暑さ指数)」です。 この記事では、WBGTの基礎知識から、最新の気象観測装置による計測方法、職場での活用法、導入のメリットまでを詳しく解説します。
2. WBGT(暑さ指数)とは何か?
WBGTとは、「Wet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)」の略で、アメリカの軍事医学研究所で開発された指標です。現在は、ISOや日本生気象学会、日本体育協会などによっても標準的な熱中症リスク指標として使用されています。
WBGTの構成要素
WBGTは、以下の3つの温度を用いて算出されます。
湿球温度(湿度)
水で湿らせたガーゼで覆った温度計により測定。汗が蒸発する時に感じる涼しさの度合い。
重み:高
黒球温度(輻射熱)
黒色に塗装された銅の球体の中心に入れた温度計により測定。直射日光や輻射熱の影響を考慮した温度。
重み:中
乾球温度(気温)
一般的な温度計で測定される空気の温度。気温。
重み:低
3. WBGT値と気温の違いと重要性
気温が35℃であっても、湿度が低ければWBGT値はそれほど高くなりません。一方で、気温が30℃でも湿度が80%を超えると、WBGT値は危険レベルに達することがあります。 このように、WBGT値は単なる気温とは異なり、「湿度」「輻射熱」といった複数の要素を含めて評価される指標です。つまり、WBGT値は「人が感じる暑さ」や「身体への熱負荷」により近い実用的な指標であり、熱中症予防には気温以上に重視すべき数値といえます。
4. WBGTの活用場面
建設・工事現場
外気温に加え、直射日光やアスファルトからの輻射熱の影響により、熱中症の発生リスクが非常に高くなります。そのため、WBGT計測システムを現場に設置し、リアルタイムで情報を取得することで、作業の中断や休憩の判断基準として活用する企業が増加しています。最近では、遠隔監視やアラート機能を備えたシステムも普及しています。
工場・倉庫
高温機器を扱う工場や、通気が不十分な倉庫などでは、屋内であっても輻射熱や機器からの放熱によってWBGT値が上昇します。大型ファンやミスト装置による冷却対策に加え、WBGT値に応じた作業ローテーションや時間制限を導入することで、熱中症リスクの低減が図られています。
教育現場・スポーツ施設
文部科学省は、WBGT値に基づく運動の中止基準を定めており、学校の体育授業や部活動、各種スポーツ施設での熱中症対策としてWBGTの導入が進んでいます。最近では、WBGT値に応じたデジタルサイネージによる注意喚起や、保護者への通知システムなどの活用も見られます。
5. 法制度とガイドライン
厚生労働省は、「職場における熱中症予防指針」において、WBGTの測定とそれに基づく行動基準の設定を推奨しています。さらに、国際規格であるISO 7243では、WBGTを用いた作業環境評価が求められており、グローバル企業のESG対応の一環としても、その重要性が高まっています。また、2021年以降は、労働安全衛生法に基づく自主的なWBGT管理の強化が各企業に求められるようになりました。
そして、2025年6月1日には、職場における熱中症対策を強化する目的で、労働安全衛生規則の改正が施行されました。この改正により、事業者には熱中症対策の実施が義務付けられています。具体的には、以下の対応が求められます:
- 熱中症発症時の報告体制の整備
- 熱中症の重症化を防止するための必要な措置に関する手順の作成
- 上記内容の関係者への周知徹底
このように、雨量計は「情報を集める機器」から、「判断と行動を自動化する装置」へと、社会インフラの中での役割を変えるでしょう。
6. WBGT計測システムの活用とその効果
近年、WBGTの計測と熱中症対策を支援する機器やシステムが急速に進化しています。計測機器そのものの高性能化に加え、IoTやクラウドとの連携により、より実用的かつ効率的なリスク管理が可能となっています。
主な機能
- リアルタイム表示: 現在のWBGT値を即時に確認でき、現場での迅速な判断に役立ちます。
- ネットワーク対応・クラウド連携:広範囲のデータを一元管理でき、複数拠点のモニタリングや、施設内の温度分布・高リスクエリアの可視化も可能です。
- アラート通知:WBGT値が設定した閾値を超えると、スマートフォンへの自動通知やパトランプの点灯などで注意喚起を行えます。
- 携帯型端末:持ち運びが可能で現場ごとに即時計測でき、柔軟な運用が可能です。
これらの機能により、工場や建設現場、学校、屋外イベント会場など広範囲な場所において、リアルタイムな監視と即時対応が可能となり、現場の安全性を高めることができます。
導入によるメリットと投資効果
WBGT計測システムの導入により、以下のような効果が期待されます。
- 労働災害の未然防止:熱中症による事故を防ぎ、休業補償や訴訟リスクの軽減にもつながります。
- 従業員の安心感とモチベーション向上:安全への配慮が「働きやすさ」や「職場への信頼感」につながります。
- ESG経営への貢献:安全で快適な労働環境の整備は、企業の社会的責任(CSR)を果たす要素として、ESG評価の向上にも寄与します。
- 教育現場での信頼性向上:生徒・学生の安全管理への取り組みが、保護者や地域社会からの信頼につながります。
初期投資こそ必要ですが、重大な事故を1件でも未然に防ぐことができれば、その費用対効果は非常に高いといえます。また、企業の安全管理体制の強化は、ブランド価値の向上や従業員の定着率向上にもつながるため、戦略的な取り組みとしても導入が強く推奨されます。
7. まとめ:WBGTの“見える化”が命を守る
熱中症は「予測できる災害」であり、WBGTはそのリスクを事前に察知するための“羅針盤”です。気温の上昇が常態化するこれからの時代において、WBGTを活用した科学的な暑さ対策は、より安全な環境づくりのための基本的なアプローチといえるでしょう。 正確なWBGT計測と“見える化”を通じた適切な対応こそが、命を守り、経済活動を持続させる鍵となるのです。
8. 暑さ指数(WBGT)計測におすすめの製品
- 温湿度センサー・黒球温度センサー・データロガー・電源がセットになった観測システム
- 暑さ指数(WBGT)をリアルタイムで計測
- ネットワーク対応で、遠隔監視・アラート通知にも対応
- 使用環境や目的に合わせたカスタマイズも可能
- JIS規格で定められた標準サイズ(直径150mm)
- 銅製・艶消し黒塗装
- 温度センサーを組み込んで黒球温度を計測可能
- 白金測温抵抗体Pt100を内蔵
- JIS規格で定められた直径150mm黒球
- 直射日光や輻射熱の影響を考慮した黒球温度の計測に最適
- センサーサイズに応じた2タイプ(FP1806/FP1810)を用意
- 屋外での気温・湿度の安定した測定に最適
- 自然通風による高い通気性
- 3線式Pt100 白金測温抵抗体
- クラスA素子を使用
- 気象庁型式証明取得済
- 温度・湿度を電圧出力
- 低消費電力設計で屋外長時間観測に最適
- コンパクトながら高い測定性能
- 高精度・高信頼性モデル
- 長期安定性・耐環境性に優れる
- 気象庁検定取得可能