熱中症対策の最前線:企業・自治体・教育現場で進む取り組みと最新テクノロジー活用術
目次
- 1. はじめに:熱中症は「防げる災害」へ
- 2. 熱中症の正しい理解と発生メカニズム
- 3. 「熱中症警戒アラート」と企業活動への影響
- 4. 現場で求められる「多層的」な熱中症対策
- 5. 各業種における実践例
- 6. 企業・自治体にとっての実務的メリット
- 7. 熱中症対策の“質”が企業価値を左右する時代
- 8. 暑さ指数(WBGT)計測におすすめの製品
1. はじめに:熱中症は「防げる災害」へ
気候変動による地球温暖化の影響で、日本では5月から9月にかけての熱中症で搬送される患者数が急増しています。総務省消防庁によれば、2023年の熱中症による救急搬送者数は9万人を超え、2024年は97,578人と増加、その多くが職場・学校・施設内で発生していることが分かっています。 これにより、2025年6月1日に、職場における熱中症対策を強化する目的で、労働安全衛生規則の改正が施行され、事業者には熱中症対策の実施が義務付けられました。 本記事では、熱中症のメカニズムやリスク要因に触れながら、現場で求められる対策、WBGT計測システムを中心とした最新のテクノロジーの活用術、そして企業としての実務的メリットまでを解説していきます。
2. 熱中症の正しい理解と発生メカニズム
熱中症とは、体温の上昇と体内の水分・塩分のバランスが崩れることによって発生し、命にかかわることもある危険な症状です。軽度のめまいや筋肉のこわばりから、重度の意識障害、臓器障害まで多岐にわたります。
主なリスク要因
- 高温多湿な環境
- 風通しの悪い場所
- 直射日光下
- 長時間の屋外活動、重労働
- 高齢者や子どもなど、体温調節能力の低い人
3. 「熱中症警戒アラート」と企業活動への影響
環境省と気象庁は、2020年から全国で「熱中症警戒アラート」を発表する制度を導入しました。これは、WBGT値が33℃以上になることが予測される地域に対し、屋外活動の中止や、こまめな水分補給の徹底を呼びかけるものです。
4. 現場で求められる「多層的」な熱中症対策
(1)WBGT値の計測、常時監視
- 建設現場、農業、物流倉庫などでWBGTセンサーを設置
- 温度・湿度・輻射熱を総合的に評価し、リスク状況を「数値化」
- 常時監視体制の構築で、危険レベルを見える化
(2)作業時間・内容の見直し
- 高リスク時間帯(11〜14時)の作業を回避
- こまめな休憩(1時間に10~15分)
- 暑熱順化(あつさに慣れるトレーニング)の実施
(3)服装・装備の見直し
- 空調服(ファン付き作業服)の導入
- 通気性の良いヘルメットやインナーの採用
- ネッククーラー、冷却ベストなどの支給
(4)水分・塩分補給の管理
- 経口補水液などナトリウム入り飲料の常備
- 「飲水タイム」を設定し、アラート通知で促す
- 尿の色や自覚症状でチェックするセルフチェック表を配布
5. 各業種における実践例
建設業
夏場の作業を午前と夕方にシフト。WBGTが30℃を超えると「作業中断アラート」が全現場に自動送信され、各班長が対応指示を実施。これにより、重症事故ゼロを実現。
製造業
空調導入が難しい屋内現場にミスト扇風機+WBGTセンサーを導入。値が28℃を超えると冷却ウェアの着用を推奨・支給、30℃以上で人員交代制へ。作業者の満足度が高まり、離職率も低下。
教育機関
グラウンド横にWBGTモニターを設置し、数値を見える化。28℃を超えると体育の屋外活動を中止し、屋内での代替活動に移行。冷房設備がある場合は活用し、熱中症リスクを低減。保護者からの信頼性が向上し、救急搬送ゼロを実現。
6. 企業・自治体にとっての実務的メリット
- 労働災害防止による保険料削減
- 安全衛生管理体制の評価向上
- SDGsやESG経営への貢献
- 入札・契約時の加点評価につながる
- 従業員・市民・学生への安心提供
見える化によって現場の行動が変わり、事故を未然に防ぐ。WBGT観測装置の導入は、その第一歩としてコスト以上の価値を生み出します。
7. まとめ:熱中症対策の“質”が企業価値を左右する時代
かつては“その場しのぎ”だった暑さ対策が、今では「安全配慮の可視化」と「ESG経営の証明」という意味合いを持つようになりました。
熱中症対策は、人命を守る行動であり、組織の信頼を築く施策でもあります。
気象観測装置と最新技術を活用したWBGT計測及び熱中症対策は、単なる防災対策ではなく、働く人を守り、企業の価値を高める“未来型リスクマネジメント”でもあるでしょう。
8. 暑さ指数(WBGT)計測におすすめの製品
暑さ指数ロガー FieldMark-WBGT
- 温湿度センサー・黒球温度センサー・データロガー・電源がセットになった観測システム
- 暑さ指数(WBGT)をリアルタイムで計測
- ネットワーク対応で、遠隔監視・アラート通知にも対応
- 使用環境や目的に合わせたカスタマイズも可能
150mm黒球 FPG150
- JIS規格で定められた標準サイズ(直径150mm)
- 銅製・艶消し黒塗装
- 温度センサーを組み込んで黒球温度を計測可能
黒球温度センサー TPT100G
- 白金測温抵抗体Pt100を内蔵
- JIS規格で定められた直径150mm黒球
- 直射日光や輻射熱の影響を考慮した黒球温度の計測に最適
自然通風シェルター FP1806
- センサーサイズに応じた2タイプ(FP1806/FP1810)を用意
- 屋外での気温・湿度の安定した測定に最適
- 自然通風による高い通気性
自然通風シェルター FP1810
- センサーサイズに応じた2タイプ(FP1806/FP1810)を用意
- 屋外での気温・湿度の安定した測定に最適
- 自然通風による高い通気性
Pt100温度センサー TPT100
- 3線式Pt100 白金測温抵抗体
- クラスA素子を使用
- 気象庁型式証明取得済
小型温湿度センサー HMP60
- 温度・湿度を電圧出力
- 低消費電力設計で屋外長時間観測に最適
- コンパクトながら高い測定性能
温湿度センサー HMP155
- 高精度・高信頼性モデル
- 長期安定性・耐環境性に優れる
- 気象庁検定取得可能